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白夜行:日文版-第63章

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「園村君」背中のほうから奈美江の声がした。「眠った?」
「ううん」彼は目を椋Г袱郡蓼薹凳陇筏俊
「眠れないね」
「うん」
 奈美江が眠れないのは当然だろうと友彦は思った。先のことが全く読めない逃避行に出なければならないのだ。
「ねえ」と彼女が再び呼びかけてきた。「あの人のこと、思い出す?」
「あの人?」
「花岡夕子さん」
「あ……」その名前を聞くと平静ではいられなかった。動揺を悟られぬよう気をつけて彼は答えた。「時々」
「そう、やっぱりね」奈美江は予想通りという声を出した。「好きだったの?」
「わからん。あの頃は若かったし」
 友彦がいうと、ふふっと彼女は笑った。
「今だって若いくせに」
「そうやけど」
「あの時」と彼女はいった。「あたしは逃げだしちゃった」
「そうやったね」
「変な女と思ったでしょうね。あんなところまで行っておきながら逃げるなんて」
「いや……」
「時々ね、後悔することがある」
「後悔?」
「うん。あの時、帰らないほうがよかったかなって。帰らないで、すべてを成りゆきに任せていたら、生まれ変われたかもしれない」
 友彦は唇を椋Г袱皮い俊1伺螀郅酥丐ひ馕钉ⅳ毪长趣媳摔摔猡铯盲俊]X率な受け答えはできなかった。
 重苦しい空気の中で、彼女がさらにいった。「もう、遅いのかな」
 この問いかけの意味は友彦にもよくわかった。じつは彼も同じ思いに支配されつつあったからだ。
「奈美江さん」ついに彼は思い切って話しかけた。「しますか?」
 彼女は黙り込んだ。それで友彦は、おかしなことをいってしまったのかなと思った。だがやがて彼女は訊いた。「こんなおばさんでもいいの?」
 友彦は答えた。「三年前から、奈美江さんは変わってないよ」
「三年前からおばさんっていうこと?」
「いや、そうじゃなくて……」
 奈美江がベッドから出る気配がした。数秒後、友彦のベッドの中に彼女はもぐりこんできた。
「生まれ変われるといいな」と彼女は友彦の耳元でいった。

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 月曜日の朝、桐原が迎えに現れた。彼はまず奈美江に謝った。いい隠れ家が確保できなかったから、しばらく名古屋のビジネスホテルで身を潜めていてほしいというのだった。
「昨日は、そういう話やなかったやないか」友彦はいった。昨夜桐原から、いい場所が見つかったから明日の朝出発しようという内容の電話が入っていたのだ。
「今朝になって、急に都合が悪なった。長い間やないから、ちょっと我慢してくれ」
「あたしはいいわよ」と奈美江はいった。「名古屋なら、昔ちょっと住んでたから土地鑑もあるし」
「その話を聞いてたから名古屋にした」桐原がいった。
 ホテルの地下駐車場には、白のマ颏工幛皮ⅳ盲俊%欹螗骏‘だと桐原はいった。仕事に使っているライトエ工騽婴工取ⅴē违猊趣郡沥证筏啶椁坤趣いΑ
「これ、新幹線の切符。それからビジネスホテルの地図」車に仱贽zんでから、封筒と白いコピ眉垽蛲┰夏蚊澜硕嗓筏俊
「いろいろとありがとう」彼女は礼をいった。
「それからもう一つ。これを持っていったほうがええ」桐原が紙袋を出してきた。
「何これ?」紙袋の中を覗き込み、奈美江は苦笑した。
 友彦も横から覗き込んだ。袋の中には、やたら強いカ毪颏膜堡颗杂盲违磨椁却螭圣单螗哎楗埂ⅳ饯筏匹蕙攻毪盲皮い俊
「例の架空口座の金を、キャッシュカ嗓扦恧丹胜ⅳ螭浃怼管嚖违ē螗弗螭颏堡胜橥┰い盲俊!袱饯螘rには、できるだけ変装したほうがええ。多少不自然でも、カメラに顔が写らんようにせんとな」
「至れり尽くせりね。ありがとう。使わせてもらう」奈美江は紙袋を、すでに満杯と思われるボストンバッグに押し込んだ。
「向こうへ着いたら連絡してくれよな」友彦がいった。
「うん」と奈美江は笑顔で頷いた。
 桐原が車を発進させた。

 奈美江を新幹線に仱护酷帷⒂蜒澶贤┰裙菠耸聞账艘丹筏俊
「うまいこと逃げのびられたらええんやけどな」
 友彦がいってみたが、桐原は何とも答えなかった。そのかわりに、こんなことを訊いてきた。
「エノモトとの話、聞いたか」
 うん、と友彦は答えた。
「あほやろ、あの女」
「えっ……」
「エノモトは最初から奈美江に近づくつもりやったんや。奈美江の銀行での立場を利用しようと企んだんやろ。彼女が交通事故を起こしてヤクザにからまれたというのも、全部エノモトが仕組んだことに決まってる。そんな単純なことにも気づかへんのやから、どうかしてるで。あの女は昔からそうや。男に溺《おぼ》れて、まともな判断がでけへんようになる」
 何もいい返せず、友彦は唾を飲んだ。だがまるで鉛を飲み込んだように胃袋が重くなった。桐原のような発想は全くなかった。
 この日、友彦は早めに帰宅した。そうして奈美江からの電話を待った。
 だが電話はなかった。

 西口奈美江の死体が、名古屋のビジネスホテルで発見されたのは、友彦が彼女を見送ってから四日目のことだった。胸部と腹部をナイフのようなもので刺されていた。この時点で、死後七十二時間以上が経過していると判断された。
 奈美江が勤務する銀行には、二日間の休暇届が出されていた。三日目からは無断欠勤となり、行内でも彼女の行方を捜していたという。
 奈美江の持ち物の中には、五つの預金通帳が入っていた。そこに入っていた預金総額は月曜日の時点では二千万円をはるかに越えるものだった。それが死体発見時には、殆どゼロになっていた。
 銀行が眨麞摔筏拷Y果、彼女は長年にわたって不正送金を行っていた。五つの預金通帳も、その目的に使われたものらしかった。
 警察は、西口奈美江が送金していた口座から、会社役員|槺尽钉à韦猡取泛辍钉窑恧贰筏蚝犷Iの疑いで逮捕した。また西口奈美江が殺された事件についても、槺兢蛉·暾{べる方針だということだった。
 ただ、奈美江が五つの口座から引き出したはずの金は、まだ見つからなかった。奈美江自身がカ嗓窍陇恧筏郡长趣洗_実だった。現金自動預入支払機の防犯カメラに、変装した女が映っていたのだが、用いられたカツラ、サングラス、マスクが、彼女の荷物の中から見つかっているからだ。
 以上の内容を載せた新聞を読んだ後、園村友彦はトイレに駆け込み、胃の中がからっぽになるまで嘔吐《おうと》した。
[#改ペ福


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第 七 章
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 原稿には、渦《うず》電流式探傷コイルの形状、というタイトルが付けられていた。ラジエ骏隶濠‘ブの欠陥を発見する器具に関する特許出願用の原稿だった。それを書いた技術者との打ち合わせを電話で終えた後、高宮栅狭ⅳ辽悉盲俊¥饯筏匹偿螗豫濠‘タの端末機が四台並んだ壁際に目をやった。すべての機械に担当者が一名ずつつき、彼のほうに背中を見せていた。担当者は全員女性だ。四人のうち枺麟娮挨温毞蜃扭皮い毪韦嫌叶摔我蝗摔坤堡恰⒉肖肴摔纤椒摔坤盲俊1伺郡沥吓汕采鐔Tなのだ。
 従来まで、この会社の特許情報はすべてマイクロフィルムに収められてきたが、今後はコンピュ郡呛唴gに検索が行えるよう、フロッピ钎%攻擞涘hされることになった。彼女たちは、その移し換えのために雇われていた。最近では、こうした派遣社員を利用する企業が増えてきている。人材派遣業は厳密にいえば職業安定法摺搐我嗓い瑵猡盲郡韦坤⑾趣喂幛欠ǖ膜苏J知さ
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